「よいか真里亞。 魔法とは感謝の気持ちの上に成り立っていることを、決して忘れてはならぬ。 妾のような邪悪の極とて、その気持ちを忘れてはならぬのだ。」 「うー、感謝?」 「そうだ。魔法は、この世に幾多ある人以上の存在に 奇跡を懇願し、それを叶えてもらうことを指す。 魔女が魔法を行使するのではない。 魔女が、人以上の存在に奇跡の行使を祈るのだ。 ……雨乞いを考えるのが良いか。 干ばつに苦しむ人々が、天に雨を懇願し、それが届いて雨が降る。 それは、天に祈りが届いたからであって、彼らが雨を降らしたことにはならぬということだ。」 「願いが届かなかったら、ベアトでも魔法は使えない…?」 (・・・・中略・・・・) 今や、魔法の力は人目を忍ばねばならぬ。 人の前でその奇跡を示すことができぬ。 人間自身がそれを拒み、否定する分際で、妾を前にし、魔法の 奇跡を示して見せろと挑発する。 その力を奪ったのが人間自身でありながら、それを挑発されること が、何と言う屈辱か…! だから妾が考えたのだ。 魔法を見せることが叶わなくとも、魔女であることを認めさせること は不可能ではないのだと。 魔法を示し、魔女であることを示せないならば。 魔法以外では成し遂げられず、魔女だと認めざるを得ないよう、 あらゆる”現象”を全て、否定しきれば良いのだ。 これは気の遠くなるような遠大な証明となるだろう。 これぞまさに、悪魔の証明の正攻法。 時間は永遠にある。
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