赤い木々に午後の陽が降り注ぎ、樹皮には鮮明な桃色の木漏れ日が落ちている。ゆっくりと蠢くように流れる粘質の「血の川」、黄みがかった粘土のようでもある奇妙な質感の砂も、知覚フィルタ越しですら気が狂ってくる感じの虹色の葉も、眩い光をたくわえている。私はここが危険で異質なタリクシアン植生であるにも関わらず、何か懐かしい記憶のようなものさえ心の奥でざわめいているのを察して、なすすべのない警戒心を抱いている。ガイドの四本足は先ほどから同じ場所に座っており、それはまだこの場所が安全である合図であるから、私はこの機会にゆっくりと周囲を観察することにした。